2012年まなび旅•福島

福島まなび旅企画担当 関谷雄一

 

 2012728日及び29日に、東京大学の学部及び大学院の有志学生9人を連れてHSF福島まなび旅を実施しました。1年ぶりに南相馬市で本格的に再開される相馬野馬追(7月最終土曜日・日曜日・月曜日の3日間実施)に合わせ、福島県の伝統文化と現地の人たちとの出会いを兼ねて、関係者からの声を聞き、学問をする立場から同県の震災復興にどのように取り組むことができるのかを学生に考えてもらうことが目的でした。

 728日早朝、東京駅を出発し、福島駅に着いたその足でコーヒー専門店『椏久里』に向かい、主人の市澤秀耕・美由紀夫妻の話を聞きに行きました。『椏久里』は元々飯舘村にあったが、中通り随一の本格的喫茶店とあって、飯舘村外からのお客も多く、福島市内に移転しても客の層の厚さは変わらない状態でした。いわば、客ごと福島市内に移転した形となっておりました。飯舘村出身の市澤夫妻は村の歴史にさかのぼって震災直後に至る村や人々の状況まで詳細な話をし、学生は大いに勉強をしました。

 訪問当日は飯野町の五大院縁日の日でもあり、昼に飯野町に少し遅れ気味に駆けつけると旧飯野町社会福祉協議会の方々が、おにぎりや野菜の漬物、団子汁を用意して待っていてくれました。縁日のお話や震災直後の話を聞きながら、手料理をいただきました。夕方には福島市中心街にて、県内市民団体の方二人(小林麻耶氏、阿部宣幸氏)から、被災者支援活動の報告をしていただきました。

 翌729日は相馬野馬追祭を見るため早朝に福島市を出発しました。福島市から南相馬市に向かう道は八木沢峠を通る原町川俣線1本しかなく、29日は同祭のハイライト、野馬追武者の「お行列」が始まる1000前に、南相馬市原町の特設駐車場に駆けつけようとする見学客の車の長い列ができておりました。相馬野馬追は、相馬周辺の市町村から騎馬武者が集まり、大きな3つの妙見神(中村、太田、小高)を神輿で招いて催される祭で、今から1000年以上前、相馬氏の遠祖・平将門が領内の下総国相馬郡小金原に野生馬を放し、敵兵に見立てて軍事訓練をした事に始まります。2011年は大震災の影響で、ごく一部の伝統行事を残し、祭りは事実上中止になりました。この事態は、太平洋戦争以来の出来事であったそうです。

私たちは真夏日の日差しの中、しばし野馬追武者の行列を見学しました。午前中とは言え、すでに摂氏25度には達していた暑さの中、鎧兜をつけて馬上に坐し、遠くを見やる若武者のまなざしは、被災から復興を目指して立ち上がろうとする、福島県の人々の忍耐強さ、力強さを物語っている気がしてなりませんでした。

 その後、立ち入り制限が解除された南相馬市小高地区の市街と海岸線を見学し、津波で一掃され、何も残っていない街角を見て私たちは再び呆然としました。福島県への短いまなび旅は参加者に福島県が抱えている自然環境のむずかしさ、原子力技術の不完全さそして、その場に暮らしている人々の切実な問題に向き合うことを可能にしたのだとおもいます。今後も可能な限りこのまなび旅を発展させながら継続してゆきたいです。

 

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