高須幸雄  理事長  挨拶


  「人間の安全保障」フォーラム(HSF)は、すべての人の命、生活、尊厳を守る「人間の安全保障」は実践されてこそ意義があるとの考えを共有する研究者、学生が中心になって2011年東日本大震災の年に設立され、今年で13年目を迎えます。

 この間、被災者支援、子どもの未来館、学習支援、難民関連の連携・教育、学びの旅、各種セミナー、人間の安全保障指標、女性の就労支援などの活動を通じて、人間の安全保障の中核である「一人一人の尊厳」を守るための実践に努めてきました。このような人間中心の考え方は、「誰も取り残されない社会」を目指すSDGsの理念に繋がっています。

 新型コロナウイルスの猛威は、特に女性や子どもを始め生活基盤の脆弱な方に深刻な影響を与え、SDGsの目標の達成が大きく後退しました。また、ロシアのウクライナ侵攻は、ルールに基づく国際秩序を根底から覆す蛮行であり、人の命、生活、尊厳からなる人間の安全保障に対する正面からの攻撃で、決して許すことはできません。人間の安全保障の視点からも、これらの危機に対して、あらゆる取り組みを強化することが重要であると思います。

 HSFとしては、2023年度も引き続き、人間の安全保障への理解、支持を増やし、「誰も取り残されない社会」を日本で実現するための活動を引き続き推進する予定です。具体的には、教育・研究・連携活動、難民関連の国際的な活動、学習支援を継続します。「人間の安全保障指標」については、宮城県での成果をもとに2022年末に『SDGsと地域社会』を出版(明石書店)し、本年3月に仙台市においてオンラインと併用で「SDGsを地域で実現しよう!」をテーマに出版記念シンポジュームを開催しました。国内外の地域社会での発展拡充を目指します。また、東日本大震災で大きな被害を受けた気仙沼市において、女性のIT就労支援、一人親世帯の生活実態調査、子どものプログラミング指導、子どもの権利条約の啓発活動を継続します。

 本年4月子ども基本法が施行され、子ども家庭庁がいよいよ発足しましたが、子どもの権利条約はその背骨ともいうべき重要な原則であり、すべての子どもが学習してほしいと思います。その一助として、気仙沼プロジェクトの一環として、学習のための『活用マニュアル』を作成しましたので、関心のある方は是非このサイトからご覧ください(近日中に掲載予定です)。

 HSFの活動に賛同してくださる会員や団体の皆様のご支援・ご協力に、心から感謝するとともに、今年度も引き続き、人間の尊厳を守るための活動への支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

理事長 高須幸雄 

2023年5月

理事長略歴

現在、国際連合事務総長特別顧問(人間の安全保障担当)、日本ユニセフ協会副会長、

中部大学客員教授、前国連事務次長(行政監理局長)、元国際連合日本政府常駐代表(国連大使)